イデコとは? メリットデメリット分かりやすく

人生100年時代”といわれている昨今、長く人生を楽しむための老後資金が注目されています。早くから老後資金の準備を始めたほうがいいとわかっていても、まだ先の将来を想像しにくく、ついつい今の生活にお金を回してしまいがち。

 

そこで、少額からコツコツと老後資金の準備ができる年金制度「iDeCo(イデコ)」があります。聞いたことはあるけれど詳しくは知らない人のために、iDeCoのしくみ、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

iDeCoとは?

 

iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の愛称で、老後資金をつくるための年金制度です。

日本の年金制度は、加入する年金制度によって将来給付される年金額を積み増していくしくみから、増築する建物のように例えられています。1階部分にあたる「国民年金」は、20歳以上の全国民が加入するもので、加入期間の長さによって受給金額が決まります。民間企業に勤める会社員や公務員には、2階部分にあたる「厚生年金」があります。この1,2階部分は国が社会保障の一環として運営しており「公的年金」に区分されます。会社員の3階部分となるのは「企業年金」で、一部の企業で導入されています。また、公務員の3階部分となるのは「退職金等年金給付」です。

 

そして2001年に登場したのが「確定拠出年金」です。ほかの年金制度と違う点は、企業または個人が拠出した掛け金を自ら運用して資産をつくるというしくみにあります。この「確定拠出年金」のうち、個人で行う「個人型確定拠出年金」がiDeCoなのです。
iDeCoは会社員・公務員の方の4階部分にあたり、自営業者・フリーランスの方の場合は、ほかの年金の加入数によって2~4階部分のいずれにもあたります。

個人で掛け金を運用して資産をつくるiDeCo

iDeCoは自分が拠出した掛け金を、自分で選んだ商品で長期にわたって運用することで、老後資金を効率的に準備できるしくみとしてつくられました。iDeCoの加入者は、まず毎月一定の掛け金を積み立て(掛け金を拠出し)、定期預金、保険、投資信託などの運用商品のラインナップから好きなものを選び、掛け金を元手に自ら運用します。そして60歳以降に、運用して得た利益分を含む金額(資産)を、年金または一時金として受け取ります。

 

ラインナップには、元本確保型と、それ以外のものがあります。元本確保型には、定期預金や保険などがあります。一方、国内外の債券・株式・リート(不動産投信)などを扱う投資信託では、リスクを伴いながらも長期にわたって運用することで、元本確保型より多くの利益を得られる可能性もあります。

iDeCoに加入する条件

 

iDeCoは原則として日本在住で20歳以上60歳未満、国民年金や厚生年金などの公的年金に加入している人であれば、加入できます。雇用形態に関する条件はなく、派遣社員、パート・アルバイト、学生、主婦(夫)にも加入資格があります。しかし、自営業者の場合、国民年金保険料の全額または一部を免除されている人、学生納付特例制度を利用していて保険料納付を猶予されている学生は、iDeCoに加入できませんので注意してください。

また、会社員ですでに企業型の確定拠出年金に加入している場合は、勤務先が企業型年金規約で iDeCo 同時加入を認めている場合のみ、加入できます。iDeCoへの加入を検討されている方は、勤務先の総務または人事に確認してください。

iDeCoはいくらから始められる

 

iDeCoは月々5,000円の掛け金から始めることができ、それ以上は1,000円単位で上乗せしていきます。iDeCoの申込時に掛け金の額を設定しますが、その後変えることができる機会は年に1回のみです。掛け金には上限額があり、下図のように加入者の国民年金の被保険者種別(主に職業)や、加入している年金制度などによってその額が定められています。

 

自営業者は月額6万8,000円が上限で、ほかの職業と比べて高めです。これは、会社員や公務員が、2階部分にあたる厚生年金から老齢厚生年金が受給できるのに対して、自営業者は原則国民年金のみとなります。そのため、老後資金を少しでも多く準備できるように、iDeCoの上限額が高く設定されているのです。

 

iDeCoのメリット

 

単に貯蓄をするよりも、将来資産を増やすことができるiDeCo。しかし利益を実感するのは大分先なので、まだまだ当面の生活を優先したほうがよいのでは、と考えてしまいます。実は、iDeCoを早くから始めておくほうが今の生活にとってもメリットがあるのです

掛け金全額が所得控除の対象

 

iDeCoの掛け金は全額、所得控除できます。小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、確定申告や年末調整で申告すれば所得税の負担を減らすことができます。将来のための積み立てで、今節税できるのは大きなメリットです。

所得税は、収入から経費(会社員や公務員の場合は給与所得控除)と所得控除を差し引いた金額(課税所得)に対して、税率をかけて計算します。iDeCoの掛け金はこの所得控除額に上乗せされるので、「掛け金×(課税所得金額に応じた)税率」分の金額を節税できることになります。税率は課税所得が多いほど高くなりますが、その分掛け金が多くなると節税効果も大きくなります。つまり、年収が高い人ほど節税効果は大きくなり、預金を銀行口座に眠らせておくよりも、iDeCoに利用することで、今の家計を助けることができるのです。

運用で得た利益が非課税

 

通常、投資信託を運用した際に出る利益(運用益)や、定期預金の利息には20.315%の税金がかかりますが、 iDeCo の場合、それらがすべて非課税です。得た利益をそっくりそのまま運用に回すことができるので、利益が利益を生み出す“複利効果”を活かすことができます。早くからiDeCoを始めれば、60歳までの長い期間運用することになるので、複利効果をより感じられるはずです。

受け取るときに税制優遇がある

 

60歳以降に受給する確定拠出年金を「老齢給付金」といいます。老齢給付金は、5年以上20年以下の期間に少しずつ分割して受け取る「年金」方式か、もしくは一括で受け取る「一時金」方式か、受給方法を選択することができます(年金と一時金を組み合わせることもできます)。

年金の場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」というように、受け取るときも大きな控除が受けられます。

年金で受け取る際は「公的年金等控除」が適用

 

老齢給付金を年金で受け取る際は、公的年金などの収入と合算した額に応じて、公的年金控除の対象となります。65歳未満だと60万円まで、65歳以上だと110万円まで税金がかかりません。しかし、60万円あるいは110万円を超えた部分は「雑所得」の扱いとなり、課税対象となります。

一時金で受け取る際は「退職所得控除」の対象

 

一時金として受け取る際は、企業などから受け取る退職金と同じ退職所得控除の対象になります。退職金の場合、勤続年数に応じて退職所得控除が増減しますが、iDeCoでは加入年数になります(1年未満の端数がある場合は切り上げて計算)。例えば、フリーランスの人が40歳から60歳になるまでの20年間積み立てた場合、退職所得控除額は800万円となります。一時金として受け取る金額が800万円以下であれば、税金はかかりません。

転職・退職しても持ち運びが可能

 

働き方が多様化したことで、結婚や出産などライフステージの変化だけでなく、キャリアアップを狙って転職する女性も増えてきた昨今。iDeCoは、転職や離職時も運用している年金資産を持ち運べるため、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できます。iDeCo から企業型確定拠出年金に、またその反対、そしてiDeCo 同士(取扱金融機関を変更する)でも持ち運びできます。ただし、いったん現金化して移管することになりますし、次の職業によっては加入条件や月々の掛け金の上限額が変わってくるため、注意しましょう。

iDeCoのデメリット

 

公的年金にプラスして加入する「もう1つの年金」として生まれたiDeCo。新しく生まれた年金制度でメリットが多いように感じられますが、いくつかデメリットもあるようです。

60歳まで引き出すことができない

 

iDeCoで積み立てた掛け金は、老齢給付金として受け取ることを目的としているため、60歳になるまで引き出すことはできません。また60歳で引き出すには10年以上加入していることが条件です。仮に60歳になった時点で加入期間が10年未満の場合、最高65歳まで引き出しが順延します。

老後資金のためとはいえ、無理のある掛け金は、生活費や子どもの教育資金、住宅ローンの返済金などを圧迫させることになりかねません。原則として中途解約はできませんが、年に1回を限度に掛け金を変更することはできます(「加入者掛金額変更届」の提出が必要です)。経済状況が厳しくなった場合は、資格喪失届を提出して「運用指図者」になることで、積み立てを停止できます。すでに積み立てた金額で運用を継続することはでき、60歳になったときにそれまでの掛け金に応じた額を受給できます。しかし、iDeCoのメリットのひとつである「掛け金の全額所得控除」が受けられなくなるため、掛け金を減らして無理のない程度に積み立てを続けたほうがよさそうです。

価格変動リスクがある

 

iDeCoの運用商品には元本確保型の定期預金以外に、投資信託があります。投資信託は、多くの人から集めた資金を、運用の専門家であるファンドマネージャーが事前に定めた方針に則って、株式や債券など値動きのあるものに投資・運用する商品です。投資信託の運用成果は、市場環境などによって変動します。運用がうまくいけば元本確保型より高い収益を得ることができますが、経済動向等によっては投資元本を下回ることもあります。iDeCoは、毎月定期的に一定額を投資していく「ドルコスト平均法」を実践することになるので、価格が下がったときは多く買え、高いときには控えめに買うことになります。長期で続けるほど平均購入単価が下がり、リスクを抑えることができます。しかし、時価が上がったり下がったりすることが気になる場合は、デメリットといえるでしょう。

iDeCoは自分自身が運用商品を選び、資産を配分するため、ある程度投資に関する知識がないと難しさを感じてしまうかもしれません。初めから手堅く元本確保型と組み合わせることもできますが、投資信託の中でもリスクの高い低いがあるので、バランスよく資産を分散することで、リスクを抑えることにつながります。運用開始後も、その人のライフステージや目標の変化に合わせて、適宜資産配分を見直すことが大切です。

受け取るときに税金がかかる場合もある

 

メリットの項目でも挙げましたが、老齢給付金を受け取る際にはその額に応じた所得税・住民税を支払わなければいけません。年金方式で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金方式なら「退職所得控除」が適用されますが、一定額を超えた部分については税金がかかります。

受け取り開始前に公的年金など支給開始年齢と金額を調べて、どちらの受け取り方であれば老齢給付金を非課税の枠内で受け取ることができるか検討しておいたほうがよいでしょう。ただし、受給額によってはいずれでも非課税で受け取れない可能性があります。

各種手数料がかかる

 

iDeCoを開始するには、銀行や証券会社などiDeCoを取り扱う金融機関で、専用口座を開設する必要があります。開設には2,829円の手数料(加入移管時手数料)がかかり、さらに口座を維持させるために加入者手数料105円(国民年金基金連合会に払う手数料)や運営管理手数料(金融機関に払う手数料で無料もある)などを毎月支払わなければいけません。金融機関を選ぶ際は、そういった手数料を確認しておくことが重要です。